慣れない会議室から始まった初日
「自分はここで何ができるのだろうか。」
初出勤の日の朝の緊張感は、今でもはっきりと覚えている。慣れない国の慣れない会社で、しかも拙い日本語で仕事をしなければならないという事実は、期待よりも不安として迫ってきた。最初の数日は会議の半分も聞き取れないまま、うなずくばかりだった。
本実習では、US Medical Inc.の口腔ケアブランド「ポケデン(POKEDEN)」を担当した。広告動画を制作し、企業サイトへ掲載し、担当者が自ら管理できる画面を整え、最後には製品パッケージのデザインまで担当した。
これは完成した成果だけを並べたポートフォリオではない。行き詰まった瞬間と解決していった過程、そして会社の外で日本の生活に慣れていった時間をまとめた体験報告書である。
実習を始めた時の自分
コンピュータ工学科で学んだWeb開発とUI/UXの知識を、実際の製品とサービスに応用した。授業で学んだ考え方が企業ではどのような基準で使われるのかを確かめ、不足している部分は実務の中で補っていった。
- 大学・学科
- 朝鮮大学校 コンピュータ工学科
- 実習期間
- 2026年6月30日 — 8月29日・夏季8週間
- 実習企業
- US Medical Inc.(東京)
- 担当ブランド
- 口腔ケアブランド ポケデン POKEDEN
- 配属・担当分野
- 広告動画・サイトへの動画掲載・インタラクション・管理画面・パッケージ
- 日本語能力
- 日常会話レベル・日本語での週次会議、フィードバック確認、現場発表を経験
- 主催・支援
- 大学SW中心事業団・JISA日本インターンシップ支援協会
大学で学んだこと
コンピュータ工学の授業とプロジェクトを通して、HTML・CSS・JavaScriptによるWeb画面の構築、ReactとTypeScriptによるコンポーネント単位の機能開発、利用者が情報を理解しやすい順序に整理するUI/UXの基礎を学んだ。今回の実習では、その知識を実際のブランドサイトと運用画面へつなげた。
身につけていた技術と、実際にできること
フロントエンド開発
HTML・CSS・JavaScript・React 19・TypeScript・Tailwind CSS v4・Vite
レスポンシブなWeb画面を制作し、動画の再生・停止やホバーインタラクションを実装できる。PCとスマートフォンで表示が崩れないかを確認し、不具合を修正する作業も行った。
UI/UX・運用画面
情報設計・レスポンシブUI・管理画面・ダッシュボード
初めて使う人でも機能を見つけられるよう、情報の順序とボタンの配置を整理できる。担当者が開発者を介さずにコンテンツや問い合わせ状況を管理できる画面を設計した。
動画・ビジュアルコンテンツ
動画企画・字幕・編集・AI画像/動画制作・パッケージ企画
製品が使われる場面を物語として構成し、素材と字幕を作り、一本の広告動画に編集できる。対象に合わせて動画とパッケージの色、文言、雰囲気を調整する作業も経験した。
テスト・問題解決
端末別確認・再生不具合のデバッグ・フィードバック反映
機能が想定どおりに動かない時は、条件を分けて原因を探し、修正できる。完成後も実際の利用環境で確認し、会議で得たフィードバックを次の版へ反映する方法で仕事を進めた。
作り、直し、もう一度確かめた時間
担当した業務は五つだったが、過程はいつも似ていた。まず作り、会議でフィードバックを受け、原因を探して修正する。完成品よりも、その繰り返しの中で得た判断基準を中心にまとめた。
WORK 01 · 動画
01製品広告動画の制作
医療現場、災害時、訓練時、子ども、屋外活動など、製品が実際に使われる場面を分けて複数の動画を制作した。構成、素材、字幕、編集速度の調整まで担当した。
難しかった点。 何日もかけて完成させた動画にも「展開が速い」「字幕が目に入らない」という修正依頼が戻ってきた。初めは自分の努力を否定されたように感じた。
そこで学んだこと。 修正を重ねるほど動画は明らかに良くなった。フィードバックとは否定ではなく、一人では見つけられない部分を代わりに見てもらうことだと理解した。
WORK 02 · ウェブ
02制作した動画をホームページへ掲載
トップ画面のどこに動画を置くか、自動再生や音をどう扱うかを決め、パソコンとスマートフォンの両方で表示を確認した。
難しかった点。 動画を入れるとページが重くなり、スマートフォンでは画面が切れることもあった。良い動画でも、待ちきれず離脱されれば意味がないと実感した。
そこで学んだこと。 作ることと、実際に見せることは違う。表示速度や端末環境まで整えて初めて、成果物が役割を果たすと学んだ。

WORK 03 · インタラクション
03マウスを載せると動画が再生される機能
写真の上にマウスを載せると動画が自然に再生され、離すと止まる機能を制作した。操作がない時は五つの場面が自動で切り替わるようにした。
難しかった点。 写真から動画へ移る時のちらつきや、素早くマウスを動かすと動画が重なって再生される問題が続いた。実習中で最も長く向き合った作業だった。
そこで学んだこと。 一人で最後まで解決した問題は忘れない。「分からない状態に耐える力」も実力の一部であることを初めて学んだ。

WORK 04 · 運用
04担当者が自ら管理できる画面
開発者を通さずに動画や画像を交換し、文言やお知らせを修正し、お問い合わせ件数を確認できるよう管理画面を整えた。
難しかった点。 自分にとって使いやすいものと、他の人にとって使いやすいものは違った。作った本人には、初めて使う人の不便が見えにくい。
そこで学んだこと。 「自分が満足するか」より「受け取る人が使いやすいか」を先に考えるようになった。自分が去った後も使われ続ける画面だからだ。
WORK 05 · パッケージ
05子ども向けとプレミアム製品パッケージ
子ども向けは宇宙飛行士のキャラクターを中心に動画と雰囲気を揃え、プレミアム製品は贈答用を意識して落ち着いた印象にした。箱の寸法と各面の情報まで整理し、印刷用データへ仕上げた。
難しかった点。 二つのパッケージが「同じ印象に見える」と言われた時が最も戸惑った。自分には良く見えても、見る人には対象の違いが伝わっていなかった。
そこで学んだこと。 自分の好みよりも「誰が見るのか」を先に考える習慣がついた。対象が変われば、色も文言も情報の順番も変える必要があった。


言葉で説明してこそ、自分の仕事になった
成果を見せることと同じくらい難しかったのは、その理由と過程を説明することだった。以下は実際の現場で業務内容を報告し、日本語で発表した記録である。
担当業務と成果をまとめて発表した日
動画、ウェブ機能、管理画面、パッケージの仕事がどのようにつながったかを企業の方々へ説明した。完成品だけでなく、問題と修正の過程を伝えるよう努めた。
拙くても最後まで自分の言葉で伝えた発表
考えを日本語の文章へ変えることは難しかったが、原稿を直し、声に出して練習し、最後まで発表した。完璧さより、伝えようとする姿勢が大切だと学んだ時間だった。
会社の外でも、毎日が小さな課題だった
ごみを曜日に合わせて分別して出すこと、初めて乗る路線を乗り換えることなど、韓国では何でもなかったことが一つひとつ小さな課題だった。一人で買い物をし、食事を作り、生活費を管理する中で、これまで当たり前にしていたことを見つめ直した。
最も印象に残ったのは「他人に迷惑をかけない」という姿勢が生活全体に根づいていたことだ。時間を守り、静かな場所では声を落とし、丁寧に挨拶を交わすことが、互いを心地よくする思いやりだと分かった。
会社の方々との食事では、会議室では話せなかったことを気軽に聞くことができた。仕事がうまくいかなかった日にも、もう一度出勤する力をもらった温かい記憶である。

能力より先に変わったのは、仕事への姿勢だった
分からなければ尋ね、間違えれば直せばよい。
最初は「失敗してはいけない」と身構えていた。しかしフィードバックを受けて直すことを繰り返す中で、完璧な人になろうとするより、学ぼうとする姿勢を持つ人の方が遠くまで進めると知った。
日本語は単なる語学力ではなく、仕事を成し遂げ、信頼を築くための道具だった。フィードバックを正しく理解できず違う部分を直した経験から、分からない時はその場で「もう一度お願いできますか」と尋ねるようになった。その一言を出す勇気が、自分を最も成長させた。
動画はサイトで見てもらい、管理画面は自分が去った後も使われ、パッケージは印刷されて人に届く。作った瞬間で止まらず、その先まで考えることが本当の仕事だと学んだ。

